火曜日, 11月 22, 2005

萬葉集入門

このごろ,息抜きによく万葉集をぺらぺらとめくって鑑賞する.
鑑賞するといっても,乏しい古典の知識であるから,せいぜいピカソの絵画を見て,派手な絵だな,とか,ルノアールの絵を見て,ああ豊満な女性だなとか(笑),そういうのと同じ程度の鑑賞であるが(苦笑).

主に読むのは岩波から出ている佐佐木信綱編の『新訓萬葉集』(上/下)である.しかし,これは解説も何もない.ただ筆写で伝わってきた原本を現代訓に書き直しただけのものである.

---だから,そのまま読んだって,俺のような古典の能力に欠く者に,すぐさまわかろうはずがない.ただ想像逞しくして,こんな情景を詠っているんだろうな,などと考えるばかりである.

一 方で以前手に入れた上村悦子女史による『万葉集入門』(講談社学術文庫525)が非常に気に入っている.前文にあるように,国文の学生が要するような学術 的解説ではなく,ごく一般の人に万葉集を味わってもらおう,という意図で以て書かれたものである.現代語訳も載っており,意味がつかみにくいときなど便利 である.

しかし,何が気に入っているかといって,女史の軽快な文章にある.
言葉の選択がまた非常に巧妙であり,文章が生き生きしている.
一番度肝を抜かれた,そしてまた思わず笑ってしまったのは,巻12 3114に対する解説である.

...(略)...なにぶんイカレポンチで甘い言葉の研究ばかりしている街の語学者だから...(略)...
(本文p.262)

イカレポンチって(笑).今や死語かもしれぬが,しかし,こういった調子で軽快に書かれてあるから読みだすとぐいぐい引き込まれる.特に女性の歌については,その解説は情熱的である.

この本について,何より厭味の全くないのがよい.インテリ女性がよく陥りがちのあの独特の厭味さがないのである.それが却って不思議な気にさせたが,女史 の経歴を見て,なるほど,納得がいった.お生まれが1909年(明治42年)で,1933年(昭和8年)に日本女子大学卒業とある.まさに大正デモクラ シー真っ只中で青春を過ごされた方なのであった.そうと知れば,女史の文章の軽快さや語句の選択も,明快に納得されるのである.

まさにデモクラシイの筆で書かれたこの一冊.お勧めである.